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HMO型医療保険の九六%で、ブランド薬とジェネリック薬の両方について自己負担を求めている。
九四年のデータでは、平均で処方薬の費用の三三%が自己負担となっている。 C博士は、PBMが採用する薬剤費管理手法を以上八つに整理して説明しているが、じつは薬剤管理の本質とは言い難い「潟Iンライン請求書処理」を除けば、それら手法の薬剤費用抑制の効果のほどについては疑問視している。
その意見を要約すると、マネジドケア組織が広範な薬剤給付管理手法を適用すると、一見、費用を節約できているようにみえるが、薬剤費の「出し渋り」が原因で、患者が併発症を起こして入院期間が伸びるといったように病院やナーシングホームのような高価な施設の余分な利用につながって、結局は、他の医療費の上昇につながることが予想されるのだが、そのことについての調査研究がほとんど手付かずであるということである。 そして、薬剤費抑制効果の評価は理想的には住民、あるいは国民全体の医療費の観点から見るべきであり、適切な医療の質の測定に基づいて十分に検討すべきである。

この分野では、今まさに質に関する費用分析に適合する手法の開発が着手されたばかりである、という。 さらに続けて、マネジドケア組織に留められた利益は、加入者や雇用主のために保険料を減らしたり、給付を増やしたりするのに使われるのではなく、市場競争の中で勝ち残るための企業買収にもっぱら使われているのではないかとコメントしている。
というのも、HMOの加入者の数で測ると、その七割が営利型HMOに属しているためだ。 そして、マネジドケア組織や彼らが使うPBM会社、メールオーダー薬局、薬局チェーンといった薬剤の大手購買者たちが製薬メーカーから取り付けるディスカウントの影響が、コミュニティの独立した小さな薬局やそこを使う地元の患者たちにしわ寄せされるのではないかと、C博士は懸念している。
ここに要約して紹介したC博士の論文は、PBMの薬剤給付管理手法の有効性についての疑問を提起する目的でまとめられている。 しかし、「処方をディスカウントしてくれる薬局ネットワークとの契約」の手法についての批判を読むと、マネジドケア出現の脈絡の中で説明きれるPBMが、じつは、もっと別な経済事象であることが見えてくる。
C博士の批判は、次の通りである。 「PBMが薬局と契約するときに問題となることの一つは、HMOによる医師選別の場合と同様に、医療提供側日が選別されることの影響である。
地域の医師や薬局は共に、近隣性や患者との長いつき合いという点で、コミュニティとっては重要な存在である。 そこで、医療提供側Hは、近年大きな影響力を持つようになったよそ者のHMOやPBMが地元の医師・薬局の選別行為をすることに対して、コミュニティの政治力を行使して対抗している。
多くの州で、ローカルなコミュニティの医師たちや薬剤師たちはそういった地域運動を背景にして、自分たちを守る法案を通して、マネジドケア組織に対して契約条項に適合するものなら誰とでも契約するよう求めている。 こうして、大きなグループやチェーンに属さない地域の独立した薬局を消滅する危機からとりあえず守っている。
コミュニティの薬局のもうひとつの脅威は、大規模メールオーダー専門薬局会社である。 しかしながら、もしも知っていれば患者はブランド薬を望むことが多く、メールオーダー薬局を使ってブランド薬からジェネリック薬へ代替させる量やそれに伴う価格のディスカウントの幅があまり大きくないと予想されることから、メールオーダー会社を使った薬剤費抑制には限界があろう。
ちなみに、処方菱の三割は急性患者のためであり、その分、地域の薬局への需要が残る。 そのため基本的な薬局の間接費はそのままであり、おそらくは単純に急性患者や店頭薬の方にコストが移るだけかも知れない。
また、患者にとってはコミュニティの薬剤師が教える情報の価値は、メールオーダー専門薬局会社がいうような注意書きや電話による照会では埋めきれないものであろう。 そのように考えれば、やがてコミュニティの薬局は次第に手をつないで、製薬会社から共同で薬を買うようになるので、彼等のディスカウントがメールオーダー薬局並みになる可能性もある」このように批判されるようなことは、マネジドケア組織、PBMの問題というよりも、薬剤処方サービスの流通改革ゆえではなかろうか。

つまり、PBMは処方薬流通の改革を促すものでもあるため、従来の薬局の存亡に大きく影響を及ぼし、それゆえ、存亡の危機に晒された薬局関係者たちは、PBMに薬剤給付管理を外注するHMOを嫌って、マネジドケアに対する反発勢力に加わるという図式が見えてマネジドケアの本質である医療費負担リスク分散の概念は、HMOでは明白であるが、PBMでは一翼を担っているとはいうものの、その役割は限定的である。 これまでも機会があるごとに、マネジドケアに対する社会の反発についてわずかずつ触れてきた。
なぜかというと、この問題は複数の場面で、また、副次的に起こっていることを分かっていただきたかったからである。 たとえば、薬の件一つを取っても、これまでに説明したような薬剤給付に直接関わる問題から、現に医師・患者の双方から反発が起きている。
その一方で、PBMのようにマネジドケア組織がひき起こす医療関連サービスの流通改革も、全く別な側面から社会の反発をひき起こしている。 その多面的問題を理解しておくことは、わが国の医療保険改革の先行きに重要な示唆を与えるものと思う。
社会の新しい試みは、いずれの場合も社会の厳しい審判が避けられない。 その例にもれず、近年になってマネジドケアは米国市民のバックラッシュ、つまり大きな反発に出会っている。
その様子は、さまざまな形で日本にも報道されているので、ご存じの方もおられるものと思う。 例えば、目に障害を持って産まれた赤ちゃんが、通常ならば専門医に相談して早々に処置して治るところを、お母さんが加入しているHMOが八週間もの間、専門医にかかることを足止めしたために、その子は手遅れで盲目になってしまったという話がある。
あるいはまた、あるHMOは加入者の患者が腹痛と血便を訴えたにもかかわらず、三カ月にわたって専門医にかかることを許可せず、その人がやっと専門医に診てもらったときには大腸ガンと診断され、まもなく亡くなったという話がある。 このようにHMO、すなわちマネジドケアを断罪する話は尽きない。
それらは一見すると、HMOが、患者に向けては医療の「受療」を、医師や病院に向けては「診療」を制限している、つまりは医療費の『出し渋り』とみえる。 著作権の関係で実物をお見せできないのが残念だが、マネジドケアを風刺する描画はいろいろな新聞や雑誌に出ており、たとえば、次の例などが分かり易いかも知れない。
マネジドケア風刺例函患者に聴診器を当てているのは医師だが、聴診器の管はHMOのスタッフの耳につながっている。 そして、HMOのスタッフが医師の耳に診断結果を吹き込んでいる…私のわずかばかりの経験で恐縮だが、九七年にボストンで暮らしたアパートに、一度、大家さんが自分の友人だというお婆さんを連れて来たことがある。

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